ROGインテリジェント冷却システムはいかにして驚異的な静音を保ちつつノートパソコンを冷却したのか
技術の進歩によりコンピュータはよりコンパクトに、そして性能はこれまで以上にパワフルになりました。それに伴いより効率的な冷却システムへの需要が高まりを見せています。ROG は最先端のパーツ群から生じるより多くの熱を冷却すべく、新手法をゼロから構築させて誕生したさせたのがインテリジェント冷却システムです。ROGチームによる先端の技術と革新的な設計が、トップレベルの性能を持つ薄いボディへの静かな動作を約束します。
静寂の世界へ
優れた冷却システムは負荷が重い時だけでなく、軽作業時にも必要です。優れた設計によって生まれたこのシステムは、ファンを完全に無効にしても動作するだけでなく、マシンの寿命を延ばすことも可能です。ウェブの閲覧、Discordでのチャットや簡単なビデオ再生といった軽作業時に、ROGインテリジェント冷却システムはファンを完全にオフにし、真の静寂を実現しています。
これはシステム上で専用グラフィックカードが必要でないと判断した際に行われ、マシンのオンボードグラフィックのみを駆動することで実現しています。マシンが静かになるだけでなく、グラフィックボードを駆動させるより消費電力が少なくなるので、マシンのバッテリー寿命を大幅に延ばすことができます。
Grizzlyの真価
低消費電力かつ静音での駆動は素晴らしいものですが、時にはその性能を最大限に発揮する必要もあります。最新のゲーミングハードウェアは、パワーとパフォーマンスの両方を限界まで高めますが、そのパワーと同時に多くの熱も発生します。デスクトップパソコンであれば、大型のヒートシンクや冷却ファンの追加で対応できますが、薄型軽量のゲーミングノートパソコンにおいては、追加できるスペースが限られています。ではゲーミングノートパソコンを効率的に冷却するにはどういった手法が採用されたのでしょうか。
その解答の一つがThermal Grizzly社による液体金属状のサーマルコンパウンド、Conductonautです。すべてのコンピュータはサーマルコンパウンドを介して、CPUやGPUからの熱を冷却システムに伝えています。サーマルコンパウンドには、酸化亜鉛、シリコンオイル、グラファイトなど、さまざまな素材が使われていますが、ゲーミングノートパソコンのパフォーマンスを最大限引き出すべく、ROGは従来の素材に比べて14倍の熱伝導率を持つ液体金属を採用しました。
ただ液体金属は導電性を持つため、ROGでは損傷を防ぐための自動適応プロセスも開発しました。これにより従来の安全性と信頼性に加え、液体金属による熱伝導率の向上を実現しました。銅製ヒートシンクにニッケルメッキを施すことで経年変化による腐食を防ぎ、CPUの周囲に絶縁パッドを設けることでマザーボードへの漏れから守ります。これらの対策によりCPUの温度を最大10℃下げるだけでなく、インテルに比べてCPUパッケージ上の部品の露出が多いAMD製CPUへの液体金属の採用にも成功しました。Grizzlyの力は留まることを知りません。
ヒートパイプによる冷却
サーマルコンパウンドは、CPUやGPUから熱を逃がすための第一ステップに過ぎません。次のステップはヒートパイプです。銅製パイプの内部に少量の水を入れて真空状態にし、通常より低い温度で水が沸騰するようにします。そしてパイプが熱に触れると内部の水は急速に沸騰し、圧力の変化によってヒートシンクへ向け水蒸気が押し出されます。そして金属製のフィンが熱を吸収し放散することで、パイプ内の水蒸気は凝縮して液体の水に戻り、ヒートパイプの側面に設けられた一連のウィック(毛細管構造の芯)に集まります。この水がパイプの熱源側へと運ばれ、新たなサイクルが始まるのです。
ヒートパイプはシステム全体の熱を素早く冷却させるのに非常に効率的なだけでなく、ノートパソコンの仕様に合わせて形状を変えることも可能です。ゲーミングマシンは負荷の高い状態で、パームエリアやWASDキーに手を置くことが多いため、これらの部分から優先的に熱を逃がすよう設計しています。そのためROGインテリジェント冷却システムは、ゲーミングマシンの性能をフルに発揮しても、手のひらの上で涼しく快適な状態を保つことができます。
しかしヒートシンク単体の放熱能力には限界があり、ハイエンドマシンではすぐに達してしまいます。 システムから熱を完全に取り除くべく、最終段階では空気の力を利用します。
独自設計のエアフロー
アークエアフローファンは、ROGインテリジェント冷却システムの基礎となります。特別設計された変厚ファンブレードは、わずか0.36mmから0.1mmまで先細りになっており、この曲率によって全体のエアフローが大幅に改善されています。そして鳥の翼端から着想を得た独自の形状により、従来のデザインより乱気流が軽減され、それに伴いノイズレベルも軽減されています。高密度フィンと全銅製ヒートシンクにより、ファンは迅速かつ静かに大量の冷却空気をシステム内に送り込み、静音性を犠牲にすることなく最高の性能を維持します。
エアフローは耐熱設計全体の重要な要素であるため、それを妨げる埃はノートパソコンの冷却にとって大きな障害となります。埃がヒートシンクのフィンに付着すると、放熱性能が下がりファンはより強く動作してしまいます。それに伴いファンのノイズレベルが上昇してしまいます。この問題を解決すべく、ROGは出口トンネルの長さと位置を調整し、空気圧と遠心力によって、埃がヒートシンクに付着する前にマシンから直接排出されるよう設計しました。このセルフクリーニングシステムにより、少ないメンテナンスでも長期に渡りその性能を維持します。
あらゆる状況に対応したプロファイル
ROGインテリジェント冷却システムは、ハードウェアによるものだけではありません。ROGによるソフトウェア、Armoury Createがマシンのパフォーマンスをさらに向上させます。Armoury Creatはワンクリックで「サイレント」「パフォーマンス」「ターボ」の中から動作モードを切り替え、パフォーマンスと冷却の調整が可能です。より細かくコントロールしたい場合は、完全手動でファン曲線をカスタマイズすることもできます。
シナリオプロファイルでは、本プロセスの自動化が可能です。特定のアプリやグループを起動した際に、設定したシステムが自動的に適用します。例えば、Steamを起動するとプロファイルが「ターボ」へと切り替わり、終了すると「パフォーマンス」へと戻るような設定も可能です。また負荷が軽いインディーズタイトルの場合は、「サイレント」に設定することで、プレイ中にヘッドフォンの必要がなく静かなゲーミング体験をお楽しみ頂けます。シナリオプロファイルは、ファンの設定を頻繁に変更することなく、ROGインテリジェント冷却システムを最大限に引き出します。詳細はシナリオプロファイルのガイドにてご確認ください。
新しい冷却の世界へ
ROGはゲーミングパソコンの限界へ日夜挑戦しています。ROGインテリジェント冷却システムは妥協することなくノイズレベルを抑え、次世代CPUやGPUの性能を最大限に発揮しています。Strix SCAR 17、Zephyrus M16、そしてエアフローをより良くする傾斜キーボードを備えたZephyrus S17でも、ROG の冷却技術はあらゆる用途に対応できる機能性を提供します。ROGインテリジェント冷却システムは、ハイエンドマシンの冷却という課題に対応すべく、ゼロから構築されたハードウェアとソフトウェアにより、ありとあらゆる環境下で快適なゲーミングを提供します。